創業75年の老舗ホテル(東京ファミリーホテル/お茶の水ホテル昇龍館)。現経営者夫妻は「売上順調、オペレーションは回る。が、未来が描けない」不安を抱えていました。Your Verseは、歴史の振り返りと個人の人生棚卸しから不変の価値を抽出――「顔の見える宿」「地域とつながる」「手作り・手直し」。さらに、夫婦それぞれの「最高の瞬間(収穫)」と役割分担(Why/What-How)を重ね、「笑顔で引退できる未来」を具体的なシーンとして作成。そこから、宿の原点を磨くためのシステム刷新・接客改善・新プラン創出など、意味づけされた改善が連鎖しました。
サポート内容(全4回各2~3時間のセッション)
- 経営者お二人自身と会社の歴史の棚卸しと分析
- 会社における二人の役割と関係性の再定義
- 会社のゴールとお二人のゴールの言語化
- ゴールに向けた課題とアクションの設定
語り手:小林 大介 様、小林 良子 様(有限会社東京ファミリーホテル 3代目経営者)
聞き手:朝長 真吾(YourVerse カタリスト)
出会い 語れない辛さに向き合うきっかけ
朝長: 改めて、この取り組みが始まる前、お二人はどんなことに悩んでいたのか、教えていただけますか?
大介さん: やはり一番は、後継者の問題でした。あとは、自分の働き方ですね。休みなく現場に出て、スタッフの一人として働いてしまっている。組織としての一体感も、どう作ればいいのか分からなくて…。
良子さん: 私は、いつ何が起こるか分からない、という漠然とした不安が常にありました。もし夫に何かあったら、このホテルはどうなるんだろう、と。彼に「ちゃんと考えて準備してね」と言い続けても、具体的な話にはならなくて。正直、もう諦めに近い気持ちでしたね。「このまま夫婦の時間がずっと取れないままのかな」って。何度も何度も同じことを繰り返して、今に至っていました。
朝長: ありがとうございます。その状況で、なぜ僕と、そしてYour Verseと一緒に取り組もうと思っていただけたのでしょうか。
大介さん: もともとは別のご縁がきっかけでしたけど、朝長さんの「不思議な話しやすさ」が大きかったですね。いわゆる「ザ・コンサル」みたいに、数字がこうで、ああしてこうしましょう、という話じゃない。もっと僕らの内面や、会社の中身の話をしてくれた。この人となら、何か変わるきっかけになるかもしれない、と。気付いたらこんなに話せるんだな、という感じでした。
良子さん: 私は正直、最初は疑問でした(笑)。社長は珍しく乗り気だけど、コンサルを入れて何が変わるんだろうって。特に最初のセッションで、いきなり自分の人生の「10個の物語」を書きましょう、と言われた時は「これは何に必要なんだろう?」「何が始まるんだろう?」と、クエスチョンマークだらけでしたね。

「おかえりなさい」に宿る、会社の魂
朝長: 戸惑いも大きかったですよね(笑)。僕らがやっていたのは、会社の歴史やお二人の人生を紐解き、そこに流れる「物語」を一緒に見つけ出す、という作業でした。その中で、特に印象に残っている気づきはありますか?
大介さん: 毎回、セッションの後に持ってきてもらうまとめの資料には驚きました。自分がただ話したつもりのことが、次の回には「あ、こういうことだったんだ」と、ちゃんと言語化されている。特に、ファミリーホテルの「収穫シーン」…つまり「心からやってて良かった」と感じる瞬間を考えた時ですね。
朝長: どんな気づきがあったのですか?
大介さん: ふと思い出したんです。「そういえば最近、フロントで“いらっしゃいませ”って言ってるけど、先代の時って“おかえりなさい”って言ってなかったっけ?」って。その瞬間に、ハッとしました。僕たちのホテルは、ただの宿泊場所じゃない。人と地域がつながる、家族のような“家”だったんだ、と。
朝長: まさに、会社の魂を“思い出した”瞬間でしたね。それは、数字だけを追っていたら、決して気づけなかったことだと思います。良子さんはいかがでしたか?
良子さん: 私は、私たち夫婦の「役割分担」に気づけたことですね。これまで、漠然と「あれもこれも、どうにかしなくちゃ」と考えていたのが、「全部やろうとしなくていいんだ」と、肩の力が抜けました。夫には夫の強みがあり、私には私の強みがある。それを補い合えばいいんだ、と。この先に少し楽しみが持てるようになりました。
霧が晴れた日
朝長: 4回のセッションを経て、お二人にはどんな心境の変化がありましたか?
大介さん: 本当に、「道筋ができた」という感覚です。今までは、何から手をつけていいか分からなかった。でも、こうやって言語化されたことで、自分でもある程度「こうしていけばいいのかな」と、目指すところが見えてきました。
良子さん: 私は、諦めていた気持ちが、「少しは期待してもいいのかな」に変わりました。この先、本当に変わっていけるなら、ちょっと楽しみだなって。この変化が、私にとっては一番大きいです。
朝長: 関係性にも変化があったと伺いました。
大介さん: スタッフを信頼して、意見を求めるようになりましたね。今までは「経営者とスタッフ」という線引きを無意識にして、自分たちだけで何とかしなきゃ、と思っていたのが、もっと頼っていいんだな、と。
良子さん: 私がずっと言ってきたことを、朝長さんという第三者から改めて言ってもらうと、彼も素直に聞いてくれる(笑)。ただの文句じゃなくて、建設的な対話ができるようになった。前より、ちょっと近くなった感じがします。

未来へ - “笑顔の引退”を見届けるまで
朝長: 最後に、これからの未来について、今どのように感じていますか?
大介さん: 正直、まだ道半ばです。でも、やるべきことが明確になった。自分たちが何を目指しているのかが分かったから、これからは自信を持って進んでいけると思います。
良子さん: 以前は、不安なことばかり考えていました。でも今は、少し先の未来が楽しみになりました。そうそう、この前のセッションで、思わず言っちゃったんですよね。「もし、私たちが笑顔で引退する日が来るとしたら、朝長さんに見届けてほしい」って。
朝長: あの言葉は、僕にとって最高の「収穫」でした。お二人の物語は、まだ始まったばかりです。その物語が、最高の笑顔で一つの節目を迎えるその日まで、僕は契約があろうとなかろうと、勝手にお二人の一番の伴走者であり続けるつもりです。
本日は、本当にありがとうございました。
対話を終えて - なぜ、僕がこの仕事に熱狂するのか(担当カタリスト談)
インタビューを終え、お二人の温かい笑顔に見送られながら、僕の心の中では、ある想いが燃え上がっていました。
僕は、自分だけの物語を、熱く、自分の言葉で語る人にもっと出会いたい。そして、その物語を全力で応援したい。その物語が、まだ語られていない誰かの心に届き、新たな物語が生まれる瞬間を、この手で創り、届けたい。
今回のファミリーホテル様との出会いは、まさにそのものでした。 お二人の心の中に眠っていた、75年分の温かい物語。それが言葉になり、熱を帯び、未来への希望に変わっていく。そのプロセスに立ち会えたことは、僕にとって最高の「収穫」でした。
あなたの中に眠る、まだ語られていない物語に光を当て、未来を照らす力に変えること。それこそが、私たちYourVerseが、この世界に存在する理由です。
株式会社YourVerse 朝長 真吾


