Your Verseでは、2020年より大学生を対象とした自己分析講座を開催してきました。「自分が最大限に活かせる、本当に生きたいと思えるキャリアはこれだとはっきり言える」ことをゴールに、学生本人が生まれてから今までの人生を振り返り、“その人らしさ”に徹底的にフォーカスする2ヶ月にわたる講座です。就職活動の準備だけでなく、人生全体を見据えたキャリア選択をサポートすることを目指しています。
今回の記事では、2020年に、大学3年生で本講座を受講し、26歳になった現在は起業家として活躍する西村寿紀さんに、受講当時に悩んでいたこと、講座を通してどのように自分の軸を見つけ、現在につながる意思決定をしたかについてお聞きしました。
講座受講時の課題
- 就活が始まり、仕事や人生について現実的に考える必要があった
- 自分のやりたいことと就職してできることの間に乖離を感じていた
- 就職活動のために限らない根本的な自己理解を求めていた
生まれた変化
- 自分が本当に没頭できる瞬間を発見した
- 就職ではなく、休学して自分で事業を始める決断をした
小学生時代の没頭体験から発見した、自分の本質的欲求とストーリー
ー講座を受講したのは大学3年生のときだそうですね。そのときに西村さんが抱えていた課題感はどのようなものだったのでしょうか?
西村様
大学3年生になって就活が始まり、仕事や人生について現実的に考える必要のあるタイミングでした。自分のやりたいことはありましたが、それを一般的な企業で叶えるのは難しいと感じていました。そんな悶々としたなかで本講座を知り、申し込みました。
ー講座を受けて、もっとも印象に残っていることはどんなことですか?
西村様
自分が本当にワクワクする瞬間を発見できたことです。多くの自己分析講座は就職活動と内定を目標にしていますが、私はもっと根本的な自己理解を望んでいました。講師の方との対話を通じて、「これが本当に楽しい!」と感じる瞬間を見つけられたときが、最もエキサイトしました。
ー講座を通して、根源的な自己理解に辿り着けたんですね。具体的にはどんな内容だったのですか?
西村様
幼稚園、小学校、中学校といった形でライフイベントごとに、時系列のチャートを作成しました。楽しかったことやワクワクしたことなど、その時々の出来事をピックアップして講師の方と整理し、最後は自分なりの言葉でストーリーとしてまとめていきました。
その中でわかったのが、自分が没頭できるのは“全体を俯瞰して戦略を練り、現時点の最適化をする”瞬間だということです。気づいたきっかけは、歴史好きの父の影響で小3のときにはじめた「信長の野望」というゲームです。自分が一国の城主になって、資源・資金・人などさまざまなリソースを持って隣国に対してどう立ち振る舞うかを考える必要があります。
小学生の頃、授業中でも日本地図が目の前に広がり、空想で練り上げた計画を思い描いていました。そして帰宅後、1日1時間と限られたゲームの時間を使って、その計画を実現するのが楽しみでした。(笑)。特に面白かったのが、全体を俯瞰して、さまざまな変数がある中で、自分と同等かそれ以上の相手をいかに攻略するかを考えることでした。そういったことを戦略立てている瞬間が本当に楽しかったです。これほどまでに没頭していたことなのに講座を受けるまでは気づきませんでした。
ー講座の中でご自身の人生を振り返って自分がエキサイトする瞬間を見つけて、西村さんの場合は、就活とは別の選択肢を選んだんですよね。
西村様
はい。私の場合は就職ではなく、休学して自分で事業をやってみる方向に決めました。正直、周囲の同級生は、大手企業への就職を決めていく中での決断になりました。ですが、自分のやりたいことを本当に実現できる方向でいきたいと思い切りました。講座の終了時に「信長の野望をやってみる方向でいきます」と宣言しました笑 そして、休学して取り組んだのは、海外スタートアップの翻訳記事を作成して販売する事業です。コロナ禍で仕事やバイトがなくなった人や友人を集めて、自分がマニュアルをつくってみんなが業務を回せる状況を整えて、利益を出すことに成功しました。
戦略的思考を活かした起業への道
ー全体を見て指令するような視点をもって取り組んだんですね。信長の野望ともつながるところがありそうですね。
西村様
本当にそう思います。たとえば、何人のリソースを確保したら何本記事ができるか。それによっていくら売上が立つか。単純ですが、それを考えて、知り合いを伝って人を集めて事業を進めていきました。
ー信長の野望と同じような種類の体験をして楽しかった。
西村様
楽しかったです。その仕組みをつくれたという楽しさもありますが、自分が事業責任者として利益を生み出す醍醐味を知り、就職ではなく自分で事業を立ち上げたのは最善だったと思います。
ー1年ほど休学して大学に戻り、その後はどうされたんですか?
西村様
翻訳記事の事業はうまくいきましたが、他に取り組んだシニアのフレイル(心身の機能が低下し、健康障害を起こしやすい状態)の方向けの取り組みや学生を主体とした企業向けのアイデアソン事業はうまくいきませんでした。その後、あるベンチャー企業でインターンを始めました。
ーインターンではどんな活動をされていたんですか?
西村様
上場企業向けコンサルティングの法人営業を始めました。なぜそれをはじめたかというと、以前の翻訳の仕事では営業なしで案件があった一方で、新規事業では自ら営業する必要があり、営業能力不足を痛感したからです。そこで営業スキルを学ぼうと決意し、法人営業の仕事を選びました。
扱っていた商材は、上場企業向けの新しい情報開示コンサルティングでした。従来の財務情報に加え、非財務情報の開示が求められる中、特に脱炭素に向けた温室効果ガス関連のコンサルティングを行いました。2年前に参入したこの分野は、多くの企業にとって初めての取り組みでした。実践で学びながらも独立した後に何をするかについては常に考えていました。
ーその後、2023年に創業したんですね。どんな事業を始めたんですか?
西村様
インターン開始前から独立を視野に入れ、社長の了承も得ていました。社長と会社のメンバーには懇意にしていただきました。次のビジネスを模索するため、さまざまな人と壁打ちを重ねていました。そうするうちに企業の非財務情報開示の周辺事業に着目することになりました。専門性を活かすことができ、かつ参入タイミングとして妥当だと考えて、このビジネスを始めることに決めました。
ー扱う商材を見つけるプロセスは、西村さんの戦略性が活かされていますね。
西村様
事業選択にあたっては、約500個の事業案をリストアップし、それぞれに点数をつけて評価しました。事前に決めた要件に合致しないものは除外し、最終的な選択に至りました。この方法は、過去の経験に基づくアプローチだったと言えると思います。
ー現在の今の商材に決めたという決め手は何だったんですか?
西村様
起業のスタンスとして、3つの制約条件を設けていました。1つ目は、一国城主になりたいということ。そのため、特に創業期には外部資本は入れないということを考えていました。2つ目は自分の能力でできて初期投資がかからないこと。最後が、今後成長が見込め、興味関心の持てる事業であることです。それらを総合して、今の事業に行きつきました。
ロールモデルは自分のおじいちゃん
ー西村さんは今後のキャリアについて、どう考えていますか?
西村様
自己分析講座でも考えていたことになりますが「自分がどう生きたいか」が大事だと思っています。そのどう生きるかの現時点でのロールモデルは、自営業をしている母方のおじいちゃんです。家族を大事にしながら、背中で語るように働いている姿に憧れていて、自分もそれができればいいなと考えています。20代の残り4年間は仕事一直線で会社を大きくする。30歳をめどに結婚して、30代以降は、仕事と社会資本(家族・友人)の両立をしたいと考えています。
ー明確に考えているんですね!20代である現在は、会社を育てていくというフェーズということですね。会社をどんな規模感にしたいなど、何かイメージされていることとかはありますか?
西村様
今はそれを悩んでいます。自分個人としては一国の城主で、戦国時代における毛利元就のように、天下統一は目指さず、身近な人、関わる人が困ったときに手を差し伸べれる力を持った存在になりたいと考えています。一方で起業家としての器の小ささにも悩んでおり、心の底から腹落ちする回答を探しています。
自己分析講座を受けてみたい方へのメッセージ
ーこれまでのお話しを踏まえてですが、大学生に戻っても同じ選択をしますか?
西村様
大学生に戻ってもたぶん今と同じ道を選ぶと思います。大学時代に掲げた目標は、スピード感も方向性も大きくずれてないと思いますので。
ー最後に、受講を検討されている大学生の方にメッセージをお願いします。
西村様
就活は、自分の轍を振りかえることのできる貴重なタイミングなので、自身に向き合い深く潜ってもよいのではないかと思います。本講座は、自分という「プロダクト」を徹底的に理解し、磨くことために必要な「深い潜水」をサポートしてくれました。また講師は私たちの深い自己探求を全力で応援してくれました。
特に印象的だったのは、人間が元来隠したいことやタブーとされることでも、講師の方が笑顔で良しとして受け入れてくれたこと。これが、自分の本質により近づける鍵になりました。普通なら言えないようなことも、安心して話せる環境。そこから、思いもよらない自己発見が生まれました。さらに、モヤモヤとした自分のイメージを的確に言語化してくれる。これは本当に貴重な体験でした。
いまターニングポイントを迎えていて、自己理解を深めたい方には、本当におすすめです。