福岡・久留米。筑後平野のまん中で、五代にわたって畑を守り続けてきた尾形家の農業は、いま新しい局面を迎えている。
継ぎ手不足・高齢化が叫ばれるなか、株式会社ベジサークは約20名の外国人スタッフを受け入れ、30代半ばの同級生コンビが現場と経営の両方を担っている。出荷量は伸び、現場はにぎやかになり、数字だけ見れば「順調な拡大」の真っ最中。
それでも、代表の尾形朝矢さんの胸には、問いが残っていた。
「このまま広げていくとして、それは本当に、ベジサークがやりたい農業なんだろうか?」
家族経営に、従業員として飛び込み、今では取締役として、ともに経営の舵を握る大曲康平さんもまた、「自分がこの船にどう関わるのか」を探り続けていた。
これは、そんな二人がYour Verseのセッションを通じて、「ベジサークらしさ」と「あったかい生長を忘れない」という言葉にたどり着くまでの、三ヶ月の物語である。
サポート内容(全3回 6時間×2回セッション)
- 経営者お二人自身と会社の歴史の棚卸しと分析
- 会社における二人の役割と関係性の再定義
- 会社のゴールとお二人のゴールの言語化
- ゴールに向けた課題とアクションの設定
語り手:尾形 朝矢様、大曲 康平様(株式会社ベジサーク)
聞き手:岡田 潤一(YourVerse カタリスト)
「個人」と「法人」が混ざり合っていたスタートライン

岡田:
最初は朝矢さん個人に、「セルフストーリーチャート」のセッションをさせてもらいました。個人としての「収穫(自分にとって最高なゴール)」を話していく中で、だんだんベジサークの話にシフトしていった、という流れだったと思います。
あらためて、当時の「課題感」を教えてもらえますか?
朝矢さん:
当時は、「個人」と「法人」が頭の中でけっこう入り混じってたんですよね。
個人の生き方と、法人としてのベジサークの方向性、それぞれの「収穫」がごちゃごちゃになってて。
そうなると、何かを決めようとしても、どちらの基準でどう考えればいいか分からなくて、決めきれない、みたいなところがありました。そこが当時の課題だった気がしますね。
「そのうち話そう」が続いていた、未来のこと
岡田:
大曲さんが感じていた「ベジサークの課題」や「ご自身の悩み」はありましたか?
大曲さん:
今回のような機会がないと、ベジサークの未来の話「これからどうしていこうか」みたいな話って、ちゃんと話さないんですよね。
俺ら二人、性格的にけっこう“ゆるい”んで(笑)、「今度ちゃんと話そうね」と言いながらも、日々の仕事に流されていくというか。
「ゆくゆくどうしていこうかな」「どこかで決めていかんといけんよね」というのはあったので、今回のような機会があったのはよかったなと思います。
はじめて自分たちのストーリーを書いてみた日

岡田:
「直感でストーリーを書いてみましょう」とか、「ホームポジション」の話とか、 体験してもらうワークが多かったと思いますが、いかがでしたか?
大曲さん:
やったことがないことばっかりだったんで、最初は全然出てこなかったですね。
自分を俯瞰して見る、っていうのも、まあ、難しい。でも、難しいなりに考えていくと、「ああ、こういうことかな」と、自分の思考が少しずつ整理されていく感じはあって。
あんまりガチガチに詰められるのは好きじゃないタイプなので(笑)、岡田さん長谷川さんと話しながら、自分たちの考えが話しやすい場が、自分には合ってるなと思いました。

ベジサークくんが教えてくれた「あったかい生長」という軸

岡田:
最初はお二人それぞれのストーリーを書いてもらって、そのあと「ベジサークくん」の視点でストーリーを書いて。最後に、ベジサークのミッションを紡いでいく、という流れでした。
お二人で書いたベジサークくんのストーリーを合体させて、「じゃあ、この会社のミッションって何だろう?」と考えていったときに出てきた言葉が、「あったかい生長を忘れない」でしたよね。
そのときの感覚とか、その言葉に込めた思い、 「ベジサークらしさ」について、聞かせてもらえますか?

朝矢さん:
ベジサークを俯瞰して見たときに、「与える(ギブする)会社だな」と思ったんですよね。ちょっと“ギバー過ぎる”くらい(笑)
その根っこには、代々尾形家の中で続いている「認めてほしい」そういう思いもあることに気がつけました。いい結果になる時もあるし、やりすぎるとしんどくもなる部分でもあるんですけど、全体として、そこがベジサークの良さなんだろうなと。
尾形家の農家を初代として始めた大吉さんから、4代という世代を継いで自分たちにバトンがつながってきている。紆余曲折ありながら、少しずつ着実に成長してきている。そういう「つながり続けてきたもの」があるから、「今がある」というのを忘れたくない。今があるのは、自分たちだけの力じゃないんだということも含めて、気づくことができました。
その連なりが、「あったかい生長を忘れない」という言葉になったのかなと思います。

大曲さん:
自分も、誰かに「やってあげる」のは好きなんですよね。新人が来てくれたら、本当に可愛がりたいし、何かしてあげたいと思うし、相手も喜んでくれる。
でも、変に「欲」を出したくないんです。「見返りを求めるからやる」のは違う。困っとる人がおったら、普通に助けてあげる。それが、うちの色でいいかなと。
周りからも、「ベジサークは何か違うよね」とか、「ちゃんとやっとるよね」って、 口には出さなくても思ってもらえるような存在でありたいなとは思います。
そのためには、俺ら自身もスキルアップしないといけないし、頑張らないといけない。そういう動きをしないと、頼ってもらえる存在にはなれない。
そこは、ずっと思っているところですね。
でっかい目標より、足元の「収穫」を積み重ねる

岡田:
「収穫(自分で自分を褒めたいと思えるシーン)」をホワイトボードにたくさん書き出していきましたよね。「収穫」を具体的に描いていく中で、何か変化は感じましたか?
朝矢さん:
変化は、ありましたね。それまでは、「すごい大きな『これだ!』っていう目標」が必要なんだと思ってたんですけど、その前に、もっと手前に、いくらでも「目指すところ」があるなって。
あんまりガチガチに決めすぎずに、まずは目の前、近いところのゴールから立てていけばいい。
大きな目標は必要かもしれないけど、そこが決まってなくても、今、近くにいる人たちと一生懸命やれていたら、それが一番大事なんじゃないかなって思うようになりました。
岡田:
それって、まさにミッションの「あったかい生長を忘れない」にもつながっている感じがありますよね。
朝矢さん:
そうですね。つながっていると思います。

大曲さん:
やりたいことって、もともと自分たちの中にあったと思うんですよね。ただ、「なんとなく思うだけ」で止まってた。
今回、「勉強会やりたい」とか、スキルアップの話も実際に動けているのは、Your Verseさんが入ってくれて、「やろう」と決めたからだと思います。
この機会がなかったら、多分「いつかできたらいいな」で終わってたと思うんで、そこは本当に、背中を押してもらったな、という感覚があります。
伴走者がいるからこそ見えてきたもの

岡田:
では最後に、Your Verseが関わったことで、「ここがよかった」と感じているポイントがあれば、教えてください。
朝矢さん:
自分は、もともと「先を見過ぎる」パターンがあったんですよね。遠い未来のことばかり考えて、足元がおろそかになる、というか。
今回のセッションを通じて、「もっと足元のゴールって何だろう?」というところを意識するようになったのは、大きかったです。
サイクルをたくさん回すこと、つまり「小さな目標を決めて、試して、振り返って、また次へ」というのを繰り返すことの大事さに気づけたのは、良かったなと思います。
岡田:
最初は、ちょっとゴールが遠すぎて、周りがついていけない感じもありましたもんね(笑)
大曲さん:
そうそう。「ベジサークを五大陸で!!!」とか、でっかい話ばっかりしよったもんね(笑)
岡田:
でも今は、「足元にある収穫」が連続していって、その先に大きな収穫がある、という感覚になってきている気がします。
岡田:
大曲さんはどうですか?
大曲さん:
外部の人とこうやって話す機会って、農業やってるとあんまりないんですよね。あっても、すごく堅い場だったりして、こんなフレンドリーに話せる人って、数少ない。
だから、こういう機会を持てるだけでも全然違うし、話すだけで整理される部分もたくさんある。
そこでアドバイスをもらえるなら、なおさらいいなと思います。社長も言ってましたけど、長くうちを見て、アドバイスをもらいながら、一緒に生長していけたらいいな、と思っています。
岡田:
Your Verseもベジサークくんがたくさん収穫をしていく物語の中に居続けたいと思っているので、末永くよろしくお願いいたします。
本日は、ありがとうございました!
終わりに-カタリストとしての伴走を経て
僕自身が福岡出身であり、いずれ地元と仕事の接点を持ちたいと思っていたなかで、今回地元の企業様の支援をできたこと、そして物語の紡ぎ手として歴史ある企業様に携われたことが非常に有り難い経験でした。
今回のプロジェクトで見つけた収穫に向けてすぐに行動が起き始め、振り返りセッションではもう勉強会の日程が決まっていて、伴走セッションでは実際に開催したことを笑顔で話すお二人がとても記憶に残っています。
これから収穫をたくさんしていくなかでの喜びもあれば、うまくいかずに停滞するときもやってきます。カタリストはハイライトだけに寄り添うのではなく、ローライトや苦しみもともに味わい、長く伴走し続ける存在としてベジサークくんのそばに居続けたいと思います。
Your Verse カタリスト 岡田 潤一


