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ベジサークらしさを、現場の役割へ。メンバーに仕事を託すまでの6か月

株式会社ベジサーク

株式会社Your Verse 長谷川朋弥・岡田潤一

業種
農業
事業内容
野菜の生産と販売
従業員数
約20名(外国籍スタッフを含む)
ご利用サービス
  • カタリスト(触媒)伴走支援
ベジサークらしさを、現場の役割へ。メンバーに仕事を託すまでの6か月

お話を伺った方:株式会社ベジサーク 尾形朝矢さん(中央)、大曲康平さん(左下)、尾形瑞稀さん(右下)
聞き手・支援:株式会社Your Verse 長谷川朋弥(左上) 岡田潤一(右上)


前回の支援では、代表の尾形朝矢さんと取締役の大曲康平さんが、自分たちと会社の歩みを振り返り、ベジサークとして大切にしたいこと、そして、会社の方向性を言語化しました。その経緯は、前回の事例記事で紹介しています。

その続きで向き合ったのが、さらなる業容拡大をしていくにあたり、外国籍のメンバーが多く働く現場で、一人ひとりの成長をどう支えるかという課題です。外国籍の方を雇用する農業法人は多くありますが、不満を持つことが多く、時には脱走することも。一方、ベジサークでは、外国籍スタッフのほとんどがイキイキと働き、そういった問題とは無縁のよい人間関係が根付く稀有な会社です。

そんなベジサークでは、育成や評価を整えたいと思いながらも、日々の仕事では、できそうな人にその都度頼んでいました。Your Verseと約6か月にわたり、メンバーへのインタビュー、将来像の具体化、カルチャーや役割の整理、経営チームの相互理解に取り組みました。

役割を決めた後、新たに任されたサブリーダーが周囲に声をかけ、責任を持って仕事を進める姿が見られるようになったといいます。経営陣3人に、取り組みの過程と、実感している変化を聞きました。

業種農業
事業内容野菜の生産と販売(小松菜、ほうれん草、ブロッコリー、じゃがいも、オクラ、ベトナム野菜など)
所在地・設立福岡県久留米市/2023年7月設立(尾形家は六代続く農家)
従業員数約20名(外国籍スタッフを含む)ベトナム、フィリピン、カンボジア、インドネシアの4カ国
ご利用サービスカタリストによる人材育成伴走支援(育成・キャリア設計)

支援前の状態

  • 社長の尾形朝矢さんと取締役である大曲さんの指示のもと、2名の外国人リーダーと10数名の外国人スタッフが現場作業を行なっていた
  • 順調に伸びる事業に対して、新たな外国籍メンバーの採用を控えていた。
  • 新しい取引の開始に伴い、営業の強化や仕入れ業務の増加が予定されていた

サポート内容(2026年3月〜8月、6ヶ月間/全10回・1回1〜2時間)

  • 退職者の振り返りと、現メンバー15名への15分ヒアリングによる、現状の構造把握
  • 現メンバーのスキルの棚卸しと、1〜5年後の事業・人員の姿の検討
  • カルチャー「お陰様を忘れずにあったかい生長をし続ける」、行動指針、ルールの言語化
  • 経営の3人の相互理解(活躍スタイル)と、2日間の合宿での本音の対話
  • 生産部の階層(新人・スタッフ・サブリーダー・リーダー・部長)と、評価・昇格基準の設計

育成と評価を整えたい。でも、決め方も、進め方も分からなかった

事業を広げるために、まず必要だったのは、現場の役割をはっきりさせることでした。


──ベジサークでは、どのような会社づくりを大切にしていますか。

大曲さん:外国籍のメンバーがほとんどですが、日本人と変わらない扱い方をしています。なので、誰でもできるような仕事だけをさせるのではなく、スキルを身につけてもらい、それに見合う報酬を払っています。そういう取り組みが伝わって、みんなやる気を持って頑張ってくれる会社になっていると感じています。

瑞稀さん:住む環境や働く環境を、なるべく安心できるものにしたいと思っています。安心して仕事に力を発揮できるように、というところに力を入れていますね。

──その中で、プロジェクト開始前は何が課題だったのでしょうか。

朝矢さん:事業が大きくなるにつれ、メンバーが増えていく状況で、育成制度や評価制度の必要性を感じていました。生産現場で作業を担っている外国籍スタッフの中から、マネジメント階層を決めたり、やるべきミッションや仕事、守るべき行動基準を言語化して、「ここまでやってくれたら、こうなるよ」という会社のスタンスやキャリアパスを示していきたかったんです。でも、正直、どうやって進めたらいいのかが、分からなかったんですよね。

大曲さん:人数が多くなってきて、役割や責任をちゃんと決めないと、品質高く生産ができなくなってくるだろうという危機感がありました。ですが、今までは、「この人ならできそうだから頼もう」という感じでした。感覚ではなく、自分たちが何を基準に判断するかを整理しないといけないなと感じていました。

瑞稀さん:メンバーの人は、誰に相談したらいいのか、分かっていないように見えていました。体調が悪くても、相談していいか迷って、倒れそうになるまで我慢している、みたいなところがあったんじゃないかと思います。


「やりたい」が実際に動いた経験が、依頼につながった

──引き続きYour Verseに依頼しようと思った理由を教えてください。

朝矢さん:カルチャーや会社の中長期のシナリオを一緒に考えてもらってきました。その結果として、「やりたいよね」と話していた大曲さんが主導する若手農家向けの勉強会などを実行することができました。Your Verseと一緒に進めることで、会社が前に進んだ感覚があったので、育成や評価についても、一緒にやっていきたいと思いました。

──大曲さんはいかがでしょうか?

大曲さん:勉強会は8月に第3回も開きました。参加者が増えて、場所が狭くなったので、近所の会場に移ったほどになりました。若手の農家が悩んでいることを話して、みんなで意見を交換する、有意義な時間になっています。Your Verseとの話し合いで「それ、いいですね。やろう」と背中を押してもらったことが、自分が動くきっかけになったと思っています。

今回の育成についても、自分たちだけでは、どのように決めていくのか、どこから考えればいいかさえ、分からない状態でした。その状態で自分たちでやると、かなり時間がかかると思うんです。Your Verseに入ってもらうことで、ガイドがある中で、自分たちで考えながら一緒に進められる。その違いは大きいと思いました。

勉強会の様子。新規就農したばかりの若手も参加するように。

メンバーの「長く働きたい」を聞き、任せる仕事を考えた

役割を整理するにあたり、まずは今働いているメンバーの思いを聞くところから始めました。


──メンバーへのインタビューでは、どんな発見がありましたか。

瑞稀さん:最初にインタビューをして、そのあと個別の面談も行いました。こまめにやっても、意見が変わることって結構あるんだなと思いました。ルールや決まりはいろいろ変わっていくので、こうやって話を聞く機会を設けて、みんなの気持ちを聞きながら進むことで、会社が「こうしてください」と決めて落とすよりも、大きな波が立たずに進むなと感じました。全員に「この日に話を聞きます」と伝えて機会をつくることで、相手も話しやすいようです。「みんな一緒なんだ」と分かることもあると思います。

大曲さん:「長く働けるなら働きたい」という人が多くいたことが印象的でした。会社側の待遇もあるとは思うんですけど、メンバーのことをしっかり見てあげて、働きやすい会社だから、長くいてくれるんだろうなと、インタビュー結果を見て思いました。本心かどうかは分からないですけど、すぐに帰りたいと思ってる人は、いなかった。めっちゃいい会社だなと自信が深まりました。

朝矢さん:「この会社が一番いい」と、話してくれていたのはとても嬉しかったです。一方で、特に外国籍のメンバーには、指示した作業をしてもらってる状況だったことが、できるメンバーからすると不満だったことも、課題としてわかりました。ここにずっといたいと言ってくれたなら、スキルを身につけてもらって、もっと責任ある仕事を任せていける仕組みを作っていきたいなと、改めて感じました。

──会社の3年後、5年後の姿も言葉にしました。目標を描いて、どう感じましたか。

朝矢さん:先を見て「こうしたい」と夢を描くのは得意なので、楽しかったです。ただ、それを公表して「どこからやっていこう」となったときには、本当にいけるかなという不安も出てきました。でも、自分以上にみんなにやる気があるんです。それを見て、目標に向かって進めていっていいんだなと思いました。

大曲さん:大きな数字そのものは、正直、あまりぴんと来ていませんでした。それより、やるべきことは何か、実現するにはどうしたらいいかを考えたい。自分たちが思っている以上に、みんなやる気もスキルもあるので、その力をどう発揮してもらうかだと思っています。
メンバーも、会社が大きくなったり、自分たちが頑張ってボーナスをもらえたりすることを、うれしいと思ってくれている。現在は、会社が大きくなることにあわせて、重要な仕事も少しずつ任せているので、責任感も出てきています。

──瑞稀さんは、その目標をどう受け止めましたか。

瑞稀さん:私も、数字がどうこうというより、その目標をやるには、今の自分のままでは難しいのかなという方が気になりました。仕事だけでなく、子どもや家族と関わっている自分も含めて、自分が変わらないと変わらないんだなと。
プレッシャーというか、そちらの不安がじわっと来ていました。一人ひとりが少しずつ進んでいったら、数字もついてくるのかな、というイメージです。

大曲さん:自分も、規模が大きくなることを考えると、ちょっとお腹が痛いです。失敗したくないので。毎日の段取りでも、「これで大丈夫かな」「天気はどうかな」という小さなプレッシャーはあります。
それでも、うまくいけば「やっぱりこれで良かった」と思える。自分で自分に「大丈夫、大曲。お前なら多分大丈夫」と言うこともありますね。働いてくれているメンバーも頑張っているので、自分たちも頑張らないと、とは思っています。

決起会の様子

大切にしたいことを、みんなが使う言葉にしていく

前回言葉にした会社の価値観は、今回の取り組みを経て、朝礼や会議でも共有されるようになっています。


──カルチャーや行動指針をつくる過程で、印象に残っていることはありますか。

瑞稀さん:言葉をちゃんと決めて、みんなに伝えると、自分たちもやらざるを得ない状況になりますよね。そこは、少し気が重くなる部分もありました。でも、ベジサークにはそれが必要だったのかなと思います。

朝矢さん:ベジサークの「輪郭」を具体的に表現することは、一番やりたかったところかもしれません。
仕事や作業と同じくらい、働く人のあり方も大切にしたいんです。ただ、自分の考えは、本を1冊読むとそちらに振れるようなこともあります。その中で、「ベジサークとして何が大切か」という言葉が出てきた。一緒に考えてもらわなければ、自分たちだけでは出てこなかったと思います。

大曲さん:周りへの感謝や、あったかさを大切にする言葉は、本当にこの会社らしいなと思います。仕事ができるのも誰かが支えてくれているからですし、人としてのあったかい気持ちも大事にしてほしい。そういう思いを言葉にできました。今は朝礼で、みんなが覚えて言っています。外国籍のメンバーだけで朝礼が進むようにもなっていますね。

──日々の仕事でも使えるようになっていますか。

朝矢さん:朝礼や会議の前に振り返っています。ただ、朝に意識しても、1時間たつと忘れてしまうことはあるんですよね。「誰々のこの行動は、この行動指針につながっているよね」と、具体的な行動について話す機会も増やしたいです。

朝礼。笑顔で行っている姿が印象的

お互いの考え方を知ると、話を待つ意味も分かってきた

会社の方針を決める経営陣同士も、合宿で自分たちの考え方や行動の特徴を共有しました。


──2日間の合宿では、お互いの活躍スタイルを明らかにするワークを行ない、対話しました。どんな気づきがありましたか。

大曲さん:自分には「攻略する」という持ち味があることが、はっきりしました。失敗したくないので、失敗しないと思えるくらいまで分からないと行動しない。そういう自分のことを理解できたのも、周りに知ってもらえたのも良かったです。

瑞稀さん:大曲さんが慎重な意見を言う理由は、何となく分かっていました。でも、言葉になったことで、「今は攻略しようと考えているのかな」と思えるようになりました。質問をする前に、相手の様子を見たり、それぞれに必要な間があると考えたりします。

もちろん、言葉にしたことが100%合っているとは思っていません。「こういう持ち味や特性があると言っていたけど、どういうことだろう」と疑問が残るところもあります。でも、そこにはまだ知っていく余地があるんだろうなと。誰かとの関わりを見て、「ああ、こういうことなんだな」と分かることもあると思うんです。そうやって少しずつ分かっていくのが面白いですね。

──朝矢さんは、合宿での気づきを今も意識していますか。

朝矢さん:相手がどんな考えから話しているのか、自分にはどんな癖があるのかを知れたのは良かったです。月に1回くらい、お互いのことを共有できるといいですね。何かの仕事について話すだけでなく、「自分たちはどういう人間か」「最近の自分はどうか」を話すことも大切だと思います。
理解してもらえると、自分も「つながっている」と感じられて、仕事がやりやすくなるかもしれません。お互いのことを確認する時間は、続けて持ちたいです。

みなさんの活躍スタイル

※活躍スタイルの詳細はこちら

役割を任せた後、サブリーダーの動きが変わった

今回、「サブリーダー」を新設し、チームで目標に取り組む形になりました。結果、現場で変化が見え始めています。


──現場で、特に変化を感じた場面を教えてください。

大曲さん:サブリーダーは、決めてから動きが全然違います。ハウスを見に行くと、サブリーダーが隣のハウスに向かって、「数を間違えないように〜!」と大きな声で呼びかけていました。任せられているから、間違えないようにという責任感が出ているんだと思います。気合いが入っていて、ほかの子たちは怖くないかなと思うくらいでした。でも、数量はそれくらいきちっと確認してほしいので、その姿は良かったです。

「みんなで頑張って」と言うだけではなく、役割を託したことで、リーダーがいないときに仕切る人ができた。そういう姿を見て、任せて良かったと思いました。分からないことがあれば「どうしたらいいですか」と電話もかかってきます。

瑞稀さん:サブリーダー以外のメンバーにも、変化を感じています。例えば、試験の前に眼鏡が必要なら用意するなど、身の回りを整えてから臨もうとする姿が見えたんです。
以前は前日に、他の人に言われてからやることが多かったので、前もって準備するようになったことに、ちょっとびっくりしました。質問の仕方も何か違うなと感じていて、うれしかったですね。

今回サブリーダーに就任したジェーンさんとデッサさん

会社を俯瞰し、自分たちで決めたことを行動に移せるようになった

現場に役割を託す過程は、経営陣自身の判断や話し合いにも変化をもたらしたといいます。


──約6か月を振り返って、いかがでしたでしょうか。

大曲さん:「自分としてはいいけれど、会社としてはどうなんだろう」と、会社を俯瞰して考えられるようになったことです。自分の気持ちだけでなく、ベジサークにとって何がいいか、という見方をするようになりました。

リーダーやサブリーダーのことも、自分たち3人だけで進めようとしたら、いくつかは流れていたと思います。それが実現できた。行動に移せることが増えて、一緒に進んでいることが現実になっているのがうれしいです。

瑞稀さん:今までは、結構厳しいコンサルの方が多かったんです。そのコンサルのカラーに朝矢さんが染まってしまうように感じる時もありました。ですが、Your Verseは、そういったコンサルとは異なり、近くで話を聞いてくれて、絶妙な距離感でずっとあたたかく一緒にいてくれたことがよかったです。寄り添おうとしてくれているのを感じましたね。

仕事だから、計画どおりに進めたいとか、20分で話さなきゃいけないとか、あると思うんです。でも、一緒に時間を重ねる中で、話の間の取り方やクッションの入れ方が柔らかくなってきた。そういうところも良かったです。

朝矢さん:ベジサークそのものの輪郭を一緒に探してくれて、自分たちでは拾えなかった想いなどを見つけることができました。これから海外スタッフが増えていくなかで、ベジサークという会社はどんな会社なのか、どんな人になって欲しいのか、何を大切としているのかを言語化できて、それに向けてみんなで一緒に進んでいけていることが嬉しいです。

活躍スタイルは、日頃のコミュニケーションで生じるモヤモヤの解消というか、原因が何なのかを理解できました。自分のソースや相手のソースをシェアできて、各自のパターンや感情的になる時の要因なども深く知ることができました。全く知らない一面も知れたり、日頃のパターンはそのソースからきているのかと納得する場面もありました。結局は人間関係なので、その人を理解することで良い関係性ができ、そしていい仕事につながっていけると思いました。

この6ヶ月は野菜作りではなく、会社の魂作りみたいな感じで、楽しかったです。お陰様でこれからの成長が楽しみです。


〜編集後記〜
今回、Your Verseが担ったのは、メンバーの思いや会社の将来像をもとに、経営陣が大切にしたいことと現場の役割を整理し、決めたことを実行につなげる支援でした。瑞稀さんが語る担当者とのやり取りからも、話し合いの進め方を調整しながら伴走してきた様子がうかがえます。

会社として大切にしたいことを言葉にするところから、メンバーの思いを聞き、役割を決め、仕事を託すところへ。ベジサークでは、サブリーダーの行動に変化を感じる一方、行動指針を日々の具体的な仕事と結びつけることや、経営陣同士の理解を深め続けることを、次の課題として捉えています。つくった言葉や役割を、現場で使い続ける取り組みが始まっています。